水戸市低区配水塔は、水戸市の低地部である下市(しもいち)地区に上水を給水する近代水道施設として建設された。設計並びに工事監督は、熱海(静岡)や真鶴(神奈川)など全国の水道工事を手がけた水道技師の後藤鶴松による。当配水塔は鉄筋コンクリート造りで、その外観は、塔の中央部にバルコニー回廊が一周し、その上部には、2箇所に消防ホースをシンボライズしたレリーフが彫られており、水道用だけでなく消防用水としての役割もあった。また10箇所ある丸窓にもレリーフが施され、窓の上部がアーチ状になった長窓がある。塔内の上部空間には、鋼製の水槽が設置されており、その水槽の接合部は、すべてリベット止めになっている。また、敷地内には、同時に量水棟も建設されている。
昭和60年(1985)に近代水道100選に選ばれ、平成8年(1996)には、国の有形文化財に登録された。当配水塔の水道施設としての機能は、平成11年(1999)に停止し、67年間の役目を終えることとなったが、水戸市民の熱い思いから、当配水塔は、近代水道の象徴として保存されることとなった。淡い水色と肌色のコントラストが映える美しい外観を持つ配水塔は、敷地の公園化整備と相まって近代化土木遺産として、市民に親しまれている。
水戸市水道部は建設当時の手書きの設計図を保存しており、昨年度は土木学会が創設100周年記念事業として進めている土木コレクションにも登録され、現在は各地で開催されている土木コレクション展に参画している。