足利市近代水道は、1917(大正6)年に飲料水の不良を訴える一部地区の住民からの要望によりその検討が始まり、1921(大正10)年1月の市制施行において上下水道事業が市の重要事業として位置付けられた。1922(大正11)年4月に内務省の西大条覚技師の意見聴取、7月に東京イリス商会のザーラー技師が招聘され水源地の実地調査や水量・水質調査等が行われ、その後、1928(昭和3)年4月に足利市上水道の施行実施が決議された。翌1929(昭和4)年5月に着工され、1930(昭和5)年12月に計画給水人口55,000人として竣工し、1931(昭和6)年4月に給水が開始された。
今回、選奨土木遺産に推薦する施設は、すべて1930(昭和5)年に竣工し現役で稼働している施設である。また、すべて国登録有形文化財(建造物)として評価されており(2006年3月23日)、保存状態も極めて良好である。ゼツェッション風の装飾性豊かな施設群で近代の息吹が感受されるとともに、足利市の近代化の様相を今に伝える歴史文化遺産でもある。文化財の公開として市による一般への公開も恒例化されており、今回の選奨を機に、近代化のモニュメントとしての土木遺産のさらなる啓発に結びつくものと考えている。