小山樋門は、江戸川からの逆流防止のため、明治31年に建設された3連アーチの煉瓦造水門である。現在は治水対策が進み水門としての機能はないが、上部を県道が通り、坂川に架かる道路橋として利用されている。千葉県内で現存する煉瓦造水門の中でもっとも古いものであり、歴史的に非常に価値のある土木構造物である。また、水門の土木技術の歴史として土・木・竹で構築された水門から、煉瓦造水門を経て、現代の鉄筋コンクリート造水門へ推移する技術的進化の過程を見る上でも貴重である。
小山樋門や柳原水閘の建設に携わり、松戸の治水事業に多大な貢献をした八木原五右衛門に関連のある人物として、八木原の甥にあたる井上二郎が挙げられる。井上は東京帝国大学の学生時代から千葉や茨城の煉瓦造水門の建設に貢献した技術者であり、現存する千葉県内の煉瓦造樋門の一つである柳原水閘の設計者である。また、小山樋門と柳原水閘に使用されている煉瓦は、八木原が井上に送った書簡や煉瓦の刻印から、八木原の出身である寺田勘兵衛家が経営していた煉瓦工場で製造された煉瓦であることが分かっている。
坂川は現在、千葉県の河川再生事業を実施しているところであり、計画段階から住民参加型で進められ、地域住民・松戸市・千葉県との3者で連携を図りながら川づくり・まちづくりを行っている。また、松戸市景観基本計画では松戸地域(松戸駅周辺)の景観づくり方針として歴史的・文化的建造物は保存するように努めること、地域の歴史や文化を学び伝えることが示されており、景観要素のひとつとして小山樋門もあげられる。坂川の再生事業と併せ、周辺地域のシンボルとしてより魅力的なまちづくりに活用したい。