湘南港は1964(昭和39)年の東京オリンピックの日本で初めての競技用ハーバーとして富士を望む相模湾の神奈川県指定史跡・名勝、日本百景の地である江ノ島に整備された。
江ノ島付近の海岸は昭和30年頃から浸食が著しく、その対応を昭和31年に土木学会海岸工学委員会に委嘱した結果、江ノ島東南に防波堤築造が最善との結論が出され、その高度利用を模索している中にオリンピック会場の話が持ち上がり、湘南港の計画が一気に具体化した。
建設は昭和36年5月から開始され、現場は太平洋の外海に面し極めて難工事で、第2室戸台風の被害などもあったが、関係者の努力により昭和39年7月に完成した。
東京オリンピックを皮切りに国際大会もしばしば開催され、1998(平成10)年には第53回国民体育大会(かながわ・ゆめ国体)のヨット競技会場となるなど、日本トップクラスのハーバーとなっている。
湘南港ではこれまで数多くのセーリング競技が実施されるなか、その主要施設である南防波堤護岸、北防波堤、湘南港灯台等は建設当時のままで東京オリンピックの面影を多く残し、平成13年3月にはノルウェー国王夫妻(皇太子の頃、東京オリンピックに選手として参加)の強い希望で天皇・皇后両陛下の同行のもと湘南港を訪れている。
湘南港は開設を契機に、湘南地域が日本のマリンスポーツのメッカとして「海洋文化」を根づかせ、また海岸侵食対策と言った面からも功績は大きく、2020年東京オリンピックパラリンピックのセーリング会場としての準備が進むなか、1964年東京オリンピックを直接支える為に整備された「唯一の土木施設」である湘南港を土木遺産として認定し、後世までその功績を伝えたい。