「京浜港ドック」は1926年(大正15年4月)に完成した港湾整備に必要な造函乾船渠(鉄筋コンクリート構造物専用ドック)である。
大正11年から整備が開始された横浜港第3期拡張工事(山内埠頭、高島埠頭、横浜港外側防波堤、瑞穂埠頭)を実施する上で必要不可欠な施設であった。この施設により近代横浜港としての整備が促進され、外国との貿易に大きな役割を果たした。当時の外貿大型船は、-10mの大水深岸壁を必要としたが、大型で大量に建設することが可能なケーソン工法が成立したことにより、現在の大量急速による港湾建設技術が確立した。そのケーソンを築造したのが京浜港ドックである。また、鉄筋コンクリート円環構造物やL型ブロックも多く建設され横浜港・川崎港・横須賀港の整備に使用されている。
ドライドック方式は、大水深であり厳しい波高条件にも耐えうる大型ケーソンを必要とした北海道から東北地方太平洋沿岸における港湾建設に必要とされ、網走港(大正12年)、むつ小川原港(昭和58年)、鹿島港(昭和41年)と京浜港ドックの4施設しか国内で建設されていない希少性の高い構造物である。京浜港ドックで製作したケーソン函数はドライドック方式で国内最大であり、90年を経過してもなお、研究施設として活躍している稼働遺産である。
近代横浜港の整備に大きく貢献した産業遺産であり、横浜駅にほど近く現在でも研究施設として稼働している京浜港ドックを近代土木遺産として認定し、後世までその功績を伝えたい。