わが国の鉄道建設の草創期において、橋梁の設計を指導したのは明治29年まではイギリス人技師ポーナルであり、その後を担ったのはアメリカ合衆国の技師クーパーとシュナイダーである。イギリス系トラスは、経験則重視による骨太の部材を用いた重厚感に特徴があり、一方、アメリカ系は合理的設計に基づいた細身の部材を用いたところが特徴とされる。
①の渡良瀬川橋梁は、東武鉄道佐野線に架設されたクーパー型トラスでアメリカン・ブリッジ社製の橋梁である。クーパー設計によるトラス桁は、100ft・150ft・200ft・300ftが基本となる。この渡良瀬川橋梁は、200ftで2連の曲弦プラットトラスであり、また、150ft以上の桁の結合にはアイバーと呼ばれる目玉型に仕上げた部材が使われたが、本橋梁の下弦材にも用いられている。アイバーを用いたピン結合および細身の鋼材による繊細さなど、アメリカ系トラスの特徴が随所に見られ、それはそのまま歴史的価値といえる。さらに、円形ウェル3基に小アーチを載せた煉瓦橋脚は隅石飾りとも相俟って風格が漂い、ことさら美しい景観を呈している。
②の砥川橋梁は、明治29年に英国ハンディサイド社で製作されたトラス1連を昭和21年に転用したものである。東武鉄道鬼怒川線に架かるこの砥川橋梁は、大正8年の下野軌道の開業に伴い架設された初代の橋梁の老朽化により、常磐線阿武隈川橋梁から転用された。ハンディサイド社のリボン形の銘板も確認することができる。英国製から米国製への移行期における細身の部材による米風英製トラスであり、希少性も高い。本年7月21日、国登録有形文化財(建造物)に答申された。