関東の土木遺産 関東の土木遺産
土木遺産の概要 施設位置図 施設一覧
   
群馬県みなかみ町及び新潟県湯沢町
じぇいあーるじょうえつせんしみずとんねるかんれんしせつぐん
JR上越線清水トンネル関連施設群
H29年度認定(2017)
1.名 称:
じぇいあーるじょうえつせんしみずとんねるかんれんしせつぐん
JR上越線清水トンネル関連施設群
2.完成年:
  1. ①清水トンネル(1931(昭和6)年):2800選 Aランク(群馬・新潟県境)
  2. ②新清水トンネル(1967(昭和42)年):ランク無し(群馬・新潟県境)
  3. ③湯桧曽ループ線(1931(昭和6)年):ランク無し(群馬県)
  4. ④松川ループ線(1931(昭和6)年):ランク無し(新潟県)
  5. ⑤土合駅構内土合斜坑(1967(昭和42)年):ランク無し(群馬県)
  6. ⑥湯桧曽橋梁(1931(昭和6)年):ランク無し(群馬県)
  7. ⑦毛渡沢橋梁(上り線)(1931(昭和6)年):ランク無し(新潟県)
3.形式等:
【トンネル】(2施設)
  1. ①清水トンネル(1931(昭和6)年):2800選 Aランク
    群馬・新潟県境にそびえる谷川岳の中腹を貫く延長9,702mの単線(上り線)の長大トンネル。当時としては日本一、東洋一、世界第9位の規模。従来関心の持たれなかった工事の機械化に取り組み、削岩機やズリ出し機械などの機械力を最大限に活用し、労力・経費の節減を図った。1922年(大正11)年に着工し、約9年間で完成。断面は電気機関車仕様の高さの高い馬蹄形で建設され、運転の保安上から長大トンネル区間を有する水上-石打間は開業当初より直流電化され、電気機関車の牽引により運転された。覆工材料は石積、コンクリートブロック積、場所打ちコンクリートを併用。中間地点のサミットには交換設備の「茂倉(しげくら)信号場」が設けられ、単線時代は列車交換で活躍。清水トンネルは、川端康成の小説『雪国』の舞台にもなり、「国境の長いトンネル」の一節で、多くの人に知られるようにもなった。
  2. ②新清水トンネル(湯桧曽駅、土合駅)(1967(昭和42)年):ランク無し「50年経過」
    戦後の経済成長で新潟方面への交通量が増え、これに対応すべく県境部分の輸送力増強のために新設した延長13,490mの単線(下り線)の長大トンネル(下り専用)。当時としては鉄道用長大トンネルの長さでは日本で2位(1位:北陸トンネル13,870m)だが、単線トンネルとしては、現在も日本一の規模。また、鉄道用長大トンネルの土被りでは、大清水トンネル(1,300m)に次ぐ日本2位(1,200m)となっている。1963(昭和38)年に着工し、4年で完成。国鉄発となる地中駅(2駅:湯桧曽駅、土合駅)が設置され、この複線化により上越線の輸送力が3倍となる。現在、土合駅から自由に入場にできる新清水トンネル(土合駅下りホーム)は土木構造物としての鉄道山岳トンネルを身近に感じることのできる貴重な施設(一般的な鉄道山岳トンネルは、電車で通過するのみとなる)。新清水トンネル内の「土合駅下り線ホームや土合斜坑」などのスペースは、清水トンネル等の工事写真展示やトンネル掘削技術を学べる貴重なスペースとして活用できる可能性を有している。
    新清水トンネルに関する画像
【ループ線】(2施設)
 車両の動力性能向上や路線付け替え等により現在ではほとんど見られなくなっている線路形態。高度を稼ぎトンネル長を短くするための工夫を視覚的に、そして乗車して感じられる。
  1. ③湯桧曽ループ線(1931(昭和6)年)
    第一湯桧曽トンネル(1,753m)、幸知陸橋(124m)、第二湯桧曽トンネル(423m)からなる曲線半径402mのループ線。20パーミリの急勾配を有する単線(上り線)の降りループ線で、延長約2.6kmで交差点の高低差は約46.5mとなる。車窓からループ線の一部を見ることができるのが大きな特徴で、ループ線の走行による高低差を実感できる貴重な施設。
  2. ④松川ループ(1931(昭和6)年) 
    第一松川トンネル(1,611m)、深沢橋梁(21m)、第二松川トンネル(1,643m)からなる曲線半径402mのループ線。20パーミリの急勾配を有する単線(上り線)の登りループ線で、延長約2.6kmで交差点の高低差は約44mとなる。
【その他施設】(1施設)
  1. ⑤土合駅構内土合斜坑(1967(昭和42)年)土合駅内連絡通路
    土合駅の上り・下りホーム間を結ぶための斜行(諸元:幅員7m、断面約31㎡)。清水トンネルとともに完成した土合駅は地上駅であったが、新清水トンネルの完成で、新清水トンネル中に下り線ホームを有することとなり、上り線ホームとの高低差(約81m)が日本一となる地中駅:土合駅の上り・下りホーム間を結ぶための連絡通路として利用されている。新清水トンネル掘削にあたり、工事中のズリ出しや資材供給などの役割を担うと共に、完成後の停車場設備としての必要性を考慮して計画された施設であり、現在、土木技術の迫力を体感できる貴重な施設となっている。駅舎も昭和42年に現在の姿となる。
    斜坑略図
  2. ⑥湯桧曽桧曽橋梁(1931(昭和6)年)
    湯桧曽川に架かる橋長67.5m、単線仕様の鋼製3連鈑桁橋。石積の円柱橋脚を並行する道路橋から間近に見ることができる。
  3. ⑦毛渡沢橋梁(上り線)(1931(昭和6)年)
    毛渡沢川に架かる橋長217.4m、単線仕様の鋼製11連鈑桁橋。石積の円柱橋脚を下から間近に見ることができる。複線化工事により昭和46年に完成した下り線:毛渡沢橋梁(橋長217.4m、単線仕様の単純PCT桁11連橋)が併走し、建設資材の対比とともに、曲率をもって併走する2橋梁の構造美、線形美は圧巻である。
4.推薦理由:
 トンネル掘削技術の進歩と貴重なループ線を今に伝え、谷川連峰を貫通して首都圏と日本海側を最短距離で結ぶ貴重な土木遺産である。
≪参考資料≫
(鉄道山岳トンネル掘削技術の歴史)
 急峻な山岳地形を有する日本の国土において、交通網の整備・発達を図る上では山岳地帯の克服が不可欠で有り、鉄道においても手段として「隧道(トンネル)建設技術」が必要不可欠であった。我が国初の「鉄道山岳トンネル」は、1878(明治11)年着工、1880(明治13)年完成の「逢坂山隧道(東海道本線旧線 延長665m)であるが、江戸時代の鉱山開発を通じて有していたトンネル掘削・測量技術などの伝統技術とヨーロッパの最新技術を融合させ、矢継ぎ早にトンネル建設に挑戦し、経験を積み重ねた上で1922(大正11)年には清水トンネルに着工、約9年の歳月を経て1931(昭和6)年、当時としては東洋一(世界第9位)の延長となるトンネルを竣工させるなど、トンネル掘削技術を確立していった。
(上越線の歴史と鉄道山岳トンネル掘削技術の進歩)
 東京と新潟を直結する鉄道は1888(明治12)年から計画されるが実現には至らなかった。1918(大正7)年政府による上越線敷設が決定され、群馬・新潟両県から着工された。群馬・新潟両県を結ぶ鉄路では、先ず1904(明治37)年に信越線ルート(約445km)が通じ、次いで磐越西線ルート(約420km)が1914(大正3)年に、そしてようやく1931(昭和6)年に清水トンネルを経由する上越線ルート(約335km)が通じることとなる。土木技術から見れば当時はまだ長大トンネルを確実に施工できる技術レベルにはなく、それまでの間、施行経験の積み上げによるトンネル技術のレベルアップを図り、ようやく1922(大正11)年に清水トンネル着工となる。とはいえ、当時の日本最長の笹子トンネル(約4.7km)の2倍以上となる約10kmの清水トンネル建設は技術的にハードルが高く、前後に勾配を稼いで高度を上げるためのループ線を2箇所設ける工夫や、トンネル掘削には大型施工機械(削岩機やズリ出し機械など)を導入するなどの技術革新により、約665mを最高点とする清水トンネル(9,702m)を約9年間で完成させる。そして、清水トンネル完成から約30年後の1963(昭和38年)には新清水トンネルに着工。一層の機械化により清水トンネルの約1.4倍の長さとなるトンネルを、約半分の期間(約4年間)で1967(昭和42)年に完成させることとなる。
日本の鉄道山岳トンネル技術の変遷の図
(上越線の開通効果とその後)
 県境の山々をトンネルで貫く清水トンネルを有する上越線ルートは、先行2ルート(信越線ルート、磐越西線ルート)が非常に遠回するのに対し、距離で約100km、時間も大きく(信越線ルートの約11時間から約4時間短縮、磐越西線ルートを約3時間短縮)短縮し、東京と日本海側の都市を最短距離で結ぶ鉄道ルートとなる。また、最急勾配も信越線の1/15、磐越線の1/40に比し、1/50であり電化されていたため、輸送力は両線と比較にならないくらい大きいものとなった。
 その後のトンネル掘削の技術革新はめざましく、その30数年後には複線化に着手し、最高点を約600mとする新清水トンネル(13,500m)を、さらに15年後に上越新幹線建設に際して、最高点を約525mとする大清水トンネル(22,221m)が完成する。
 上越線は、東京と新潟など日本海側の主要都市を結ぶ幹線鉄道として重要な役割を担ってきたが、1982(昭和57)年の上越新幹線の開業で人輸送などの都市間移動に係る役割は新幹線に譲ったものの、物輸送での都市間物流を担う重要幹線として大きな役割を担っている。
5.所在地:
群馬県みなかみ町及び新潟県湯沢町
6.管理者:
JR東日本(株)
7.特記事項:
清水トンネルは2800選Aランク
8.PR方法:
選奨土木遺産認定に向けたPRとしてH29夏の行楽シーズンから「土木遺産PRイベント」を実施。Gatan(ガタン)夏号の写真
  1. ①JR東日本高崎支社発行のぐんま旅と鉄道の情報誌「Gatan(ガタン)夏号」に、『新清水トンネル50周年』の特集記事を掲載。
  2. ②平成29年8月11日運行の列車『山の日 谷川岳号』(上野駅〜土合駅)に合わせ新清水トンネル50周年を記念して土合駅構内で「清水トンネル工事史スライド上映会」を実施予定。
  3. ③湯桧曽駅〜越後中里駅間の推薦遺産について、ドローン映像撮影を実施。
  4. ④「選奨土木遺産 記念イベント」を実施予定
    ・11/18(土木の日)に、みなかみ町にて式典実施。
    • ●式典(認定書・銘板授与、ドローン映像上映、講演会(小西純一先生))
    • ●個人旅行「土木遺産の旅」(在来線普通列車を利用し、講演会後に往復)
      個人旅行「土木遺産の旅」企画。水上駅13時40分発 越後湯沢駅14時13分着 (55分後) 越後湯沢駅15時8分発 水上駅15時46分着
    • ●11/18運行予定の快速列車(全車指定席)
      「NO・DO・KAモグラ号(水上駅12:15発→越後湯沢駅13:32着)」
      「NO・DO・KAループ号(越後湯沢駅13:53発→水上駅15:15着)」の
      車内で「記念乗車証明書(土木学会選奨土木遺産認定記念)」配布予定
      NO・DO・KAモグラ号の記念乗車証明書の画像案
      NO・DO・KAループ号の記念乗車証明書の画像案
9.連絡先:
東日本旅客鉄道株式会社 (株)高崎支社 設備部設備土木課
〒370-8543 群馬県高崎市栄町6番26号
TEL:027-320-7501 FAX:027-320-7134
【位置図】 NO・DO・KAループ号の記念乗車証明書の画像案
【写真】
(トンネル)
①清水トンネル(坑口)

清水トンネル(坑口)の写真1枚目
(群馬県側坑口)
清水トンネル(坑口)の写真2枚目
(新潟県側坑口)
(参考)工事中写真(土木学会附属土木図書館 デジタルアーカイブス 土木工事写真集より)
工事中の写真2枚
工事中の写真3枚目
②新清水トンネル(群馬県側)
新清水トンネル(群馬県側)の写真1枚目
(湯桧曽駅下り線ホームから)
新清水トンネル(群馬県側)の写真2枚目
(土合駅下り線ホームから)
新清水トンネル(群馬県側)の写真3枚目
(新潟県側坑口)
新清水トンネル(群馬県側)の写真4枚目
(新潟県側:清水・新清水トンネル坑口と慰霊碑)
③湯桧曽ループ線
湯桧曽ループ線の写真と地図
(湯桧曽駅上り線ホームから見た湯桧曽ループ線)
④松川ループ線(松川ループ線が貫く山々)
松川ループ線の写真と地図
(湯桧曽駅上り線ホームから見た湯桧曽ループ線)
⑤土合斜坑
土合斜坑の写真
(その他)
⑥湯桧曽川橋梁
湯桧曽川橋梁の写真1枚目
(湯桧曽川左岸より)
湯桧曽川橋梁の写真2枚目
(右岸よりループ線を望む)
⑦毛渡沢橋梁
毛渡沢橋梁の写真1枚目
(毛渡沢左岸より)
毛渡沢橋梁の写真2枚目
(毛渡沢右岸 上下線間より)
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