横浜港ハンマーヘッドクレーンは1913年(大正2)に英国の製造品を輸入し、1914年(大正3)に横浜港新港ふ頭に建設された「50t定置式電機起重機」である。ハンマーヘッドクレーンは、同時期に5基輸入され、世界文化遺産登録された長崎造船所や呉海軍工廠、佐世保海軍工廠、横須賀海軍工廠に設置された。横浜港以外は軍艦等の船舶艤装品を組み上げる施設であるのに対し、横浜港は商業目的の荷捌き地における荷役目的で配備されている。
現在、呉と横須賀は撤去され、長崎と佐世保は国登録有形文化財となっており、横浜港は近代産業遺産群の一つとして認定されているに過ぎない。
しかしながら、クレーンのみならず岸壁や荷捌き地と一体となる土木施設として、我が国の大型クレーンによる荷役の先駆けとなった場所であり、関東大震災では基礎がニューマチックケーソンであったため、他の施設が崩壊した中で損傷なく残存し耐震技術の高さが証明され、その後100年以上も使用されていたことなどから、近代横浜港の基礎を築いた土木施設のシンボルとして土木遺産に認定し、後世までその功績を伝えたい。