小河内ダムは、約1億8540万㎥の貯水能力を有する国内最大級の水道専用ダムであり、東京都の独自水源として首都東京の安定給水を支える重要な役割を担うとともに、ダム湖は「奥多摩湖」の愛称で首都圏のオアシスとして親しまれている。
昭和13年に工事着工し、戦争による中断後、昭和23年に再開、昭和32年に完成した。
建設当時、国内では最大級の水道専用ダムであり、高さ100mを超えるダム建設に関しての知見が国内にはほとんどなかったことから、主にアメリカのボルダ―ダムなどの工事報告書を翻訳して技術・知見を学び、議論を重ねたうえで、当時考え得る最新の技術をふんだんに採用した。
基礎処理では、手掘による仕上げ掘削に加え軟弱部等の掘削を行った後、我が国のダム工事では初めて高速度ダイヤモンドドリルを使用して、基礎岩盤にグラウトを注入して支持力の確保等の処理を行った。
約168万立方メートルにもおよぶコンクリートの打込みでは、ひび割れを防止するため、ブロック打設工法や中庸熱セメントを採用し、温度管理では製氷や冷却水を活用したプレクーリングやパイプクーリング等を行った。
このように当時の最新の技術の活用とその後の適切な維持管理により、小河内ダムは完成から60年が経過した現在も、健全な状態を保持している。
以上のことから、引き続き首都東京の貴重な水がめである小河内ダムの重要性と、建設にあたっての先人の方々の様々な取組を社会や土木技術者へアピールしていくため、選奨土木遺産に推薦するものである。