関東の土木遺産 関東の土木遺産
土木遺産の概要 施設位置図 施設一覧
   
茨城県鹿嶋市、神栖市
かしまこう
鹿島港
R元年度認定(2019)
1.名 称:
かしまこう
鹿島港
2.完成年:
昭和44年(1969年)開港、第1船入港(昭和40年中央航路掘り込み開始)
3.諸元・形式等:
〈日本最大の掘り込み港湾〉
南防波堤:2,816m,北防波堤:1,098m
中央航路:幅600m,水深13〜19m,長さ2.7km
南航路:幅300m,長さ3.6km
北航路:幅300m,長さ2.5km
4.土木遺産を構成する構造物等:
選奨土木遺産
船溜南防波堤(試験堤)、居切島
関連施設
鹿島ポートラジオ、ケーソンヤード、港公園記念碑
国土交通省関東地方整備局鹿島港・空港整備事務所
4.開設者(施工者):
国土交通省(旧運輸省)、茨城県
5.推薦理由:
1.鹿島港の概要
鹿島港は東京から80km圏内に位置する茨城県の鹿島灘海岸に、鹿島臨海工業地帯造成の中核施設として計画され、昭和33年に重要港湾指定、昭和40年に中央航路の掘り込み工事に着手し、昭和44年に開港した。掘り込み港湾としては、苫小牧港につづき開港した大規模港湾である。
当港湾は、砂浜海岸に建設されたY字型の掘り込み港湾で、掘り込み式港湾では日本最大、世界でも有数の規模を誇り、臨海工業地帯に立地する製鉄所や石油化学プラントの専用埠頭と広域物流を担う公共埠頭から構成されている。
2.鹿島港および鹿島臨海工業地帯建設の経緯等
昭和34年茨城県知事に当選した岩上二郎氏は、政策目標に「後進県からの脱却」を掲げ、農業生産性の低い鹿島地域の砂丘地帯に工業を誘致して県民所得の増大を図ろうと、昭和36年に「鹿島臨海工業地帯造成計画」を策定した。
これによれば、工業港を建設するとともに霞ヶ浦を水源とする工業用水道を確保し、臨海地域に4,000haの工業地域を造成して、交通網の整備と相まって住宅地も開発し、鉄鋼、石油、化学工業等の総合的臨海工業地帯の形成を図ろうとするものある。
一方、国では、鹿島地域が広大な土地に加え、東京から近距離にある(約80km)特性を持っていることに鑑み、昭和38年に「工業整備特別地域」に指定、また、「全国総合開発計画」では、拠点開発方式の実践事業に掲げ、国家プロジェクトとして事業を推進することした。
昭和38年に鹿島港の工事の起工式が行われ、昭和40年には中央航路の掘り込みに着手し、昭和44年には、鹿島港が開港、同時に港に隣接する住友金属鹿島製鉄所が操業を開始した。その後、平成28年までに約170社が立地し、鹿島港の貨物取扱量は輸入が3,841万トン、輸出が742万トンに達している。茨城県の平成28年の製造品出荷額は、鹿島臨海工業地帯の進展に伴い全国第8位(昭和41年は18位)と躍進している。
3.外洋に面した大規模港湾建設を可能にした建設技術の開発
鹿島港は、波が荒く潮流が速いため「鹿島灘」といわれる海域にあり、この太平洋の荒波をまともに受けるほぼ直線的な砂浜海岸線に防波堤を築き、そして、砂丘地帯を掘削して内港を建設するものである。
我が国では、これまで、内湾の海象条件の比較的穏やかな地域での港湾建設が中心であったため、外洋に面する海岸線に世界有数の港湾を築きあげるためには、新に数々の技術開発が進められた。その主なものは以下のとおりである。
@気象・海象予測の充実
気象・海象現象に関しては、現地に気象観測塔やミリ波レーダー波向計、超音波式波高計などの観測施設を設置して、常に短期・中期・長期の局地予測を行った。そのために毎時の観測データを一元的に解析し、すみやかに局地的特異現象も予測が出来る「気象・海象観測自動化システム」を開発した。これらにより、建設計画、施工の安全、効率の向上等に大きな効果をもたらした。
A砂上のケーソン製作
事業の最盛期には、大量の大型ケーソンを同時期に製作す必要かあることから、ケーソンヤードとして、現地の水際線近くの砂地盤を利用して、砂上でケーソンを製作し、前面を浚渫、進水させる工法を考案した。地形や工程の制約次第ではあるが非常に興味深い工法である。
Bケーソン据付けにおける「鹿島の流し方式」を考案
当手法は、鹿島港のケーソンが大型であることと港湾開港時期の工程的制約から、比較的大きい波浪時でも据付を強行せざるを得ない状況にあり、そのような中でも据え付け作業ができるよう考案した手法である。据え付け法線から少し沖合にケーソンを誘導し、波の力を利用しながら所定の位置にずらしながら据え付けるもので「鹿島の流し方式」と呼ばれ施工の効率化に寄与した。
C航路整備における大量の土砂掘削の合理化
航路掘削に当たっては、大量の土砂を掘削・運搬する必要があり、陸上からの掘削工事と海上からの浚渫工事の合理的な施工分担を行い、陸上からの掘削ではモータスクレーパーを導入し作業の効率化を図るととともに、掘削土砂の運搬にはバケットホイルエキスカベータとベルトコンベアーを用いる方式を採用し、膨大な土砂の掘削を急速に進めることができた。
また、これらの技術開発が評価され、昭和51年5月には、「土木学会技術賞」を受賞している。
参考文献:
「鹿島開発史」茨城県企画部鹿島振興課発行(平成2年)
「巨大人工港の建設」運輸省第二港湾建設局
鹿島港工事事務所発行(昭和58年)
4.選奨土木遺産を構成する構造物等
・船溜南防波堤
鹿島港における防波堤整備の着工箇所(試験堤)。整備から50年を経過した現在もなお、整備時点の捨石・被覆石を見ることができる。
・居切島
中央航路が外洋と接続する際に陸地から切り取られた島で、堀込手法を今に伝える人工島
・鹿島ポートラジオ
居切島にある船舶への情報を流す施設
・ケーソンヤード
防波堤整備のために使われるケーソンを製作するために昭和40〜41年に整備されたケーソンヤードで、現在も使われている。
・港公園記念碑
鹿島港の整備を記念して造られた港公園内にある、岩上二郎知事の開発の理念「人間性の勝利」を刻む記念碑。
・国土交通省関東地方整備局鹿島港・空港整備事務所
鹿島港の建設のため、昭和38年に開設された事務所。鹿島港開港の昭和44年10月には、当時の皇太子殿下(現上皇)が事務所屋上から鹿島港をご覧になられた。
6.所在地:
茨城県鹿嶋市、神栖市
7.管理者:
茨城県
8.管理者連絡先(同意を得ている担当部局・担当課・係名まで記入):
事業者 国土交通省関東地方整備局鹿島港・空港整備事務所
管理者 茨城県土木部港湾課
9.選定された場合に実施を予定しているアピール方法(選定前ですので、選定されたら実施したいと考えている内容で結構です):
・土木学会関東支部茨城会が、土木の日の一環として実施している見学会や講演会に土木遺産の紹介を組み込むと共に、県や建設関係団体が協同して例年実施している建設事業PRイベント「茨城県建設フェスタ」で披露する。
・国土交通省関東地方整備局鹿島港・空港整備事務所、茨城県土木部、土木学会関東支部茨城会のホームページ及び広報誌等に掲載しPRする
・開港50周年に当たる取り組みや観光資源として活用を検討する。
10.公募に関する連絡ご担当者:
土木学会茨城会 理事
国際航業水戸営業所 澤畠 守夫
〒310-0803 茨城県水戸市城南1-1-8
Tel 029-221-7251
Email:morio_sawahata@kk-grp.jp

鹿島港全景

船溜・居切島周辺

船溜南防波堤

居切島
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