従来、公益法人は、民法第34条に基づき、公益性及び非営利性について主務官庁の確認を受け、設立を許可されています。この制度のもと、公益法人は、営利が期待できず、かつ主務官庁が直接できない公益活動を代わりに実施することにより、社会の発展と公共の利益増進に寄与してきています。
一方、この制度は明治29年の民法制定以来 100余年にわたり継続され、この間、高度経済成長の終焉をはじめとする社会経済情勢の変化とともに、公益法人について、経営体制の不透明性、設立許可基準や公益性の不明確性、税制優遇下の収益事業による民業圧迫、行政代行による特定事業の独占、官僚の天下りの受け皿となる、などの問題点が顕在化してきました。
このような状況下、平成14年3月に「公益法人制度の抜本的改革に向けた取組みについて」が閣議決定され、公益法人制度について抜本的かつ体系的な見直しが行われることとなりました。以降、平成15年11月に設置された「公益法人制度改革に関する有識者会議」などでの検討を経て、平成16年12月に閣議決定された「今後の行政改革の方針」の中で「公益法人制度改革の基本的枠組み」が具体化されました。新たな公益法人の基本的仕組みは、(1)現行の公益法人の設立に係る許可主義を改め、法人格の取得と公益性の判断を分離することとし、公益性の有無に関わらず、準則主義(登記)により簡便に設立できる一般的な非営利法人制度を創設すること、(2)各官庁が裁量により公益法人の設立許可等を行う主務官庁制を抜本的に見直し、民間有識者からなる委員会の意見に基づき、一般的な非営利法人について目的、事業等の公益性を判断する仕組みを創設すること、とされました。
この基本的枠組みに基づき、平成18年6月2日に「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律案」(法人法)、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律案」(認定法)及び「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」(整備法)の3法が公布されました。3法は平成20年12月1日に施行され、現行の公益法人は、施行日から5年間の移行期間内に必要な手続きを行い、「一般社団(財団)法人」(一般法人)又は「公益社団(財団)法人」(公益法人)のいずれかに移行しなければ解散したものとみなされることとなりました。
一般法人は、民間企業並みに課税されますが事業内容に非営利性以外の制約がなく、法人法の規定を満たし行政庁の許可を受けて移行できます。一方、公益法人は、税制優遇が受けられますが事業に非営利性だけでなく公益性が求められ、法人法に加え厳しい認定法の規定を満たし行政庁から公的認定を受けなければ移行できません。
土木学会は、この新たな公益法人制度への移行にあたり、学会の事業の公益性、内部統治の重要性、今後の活動に当たって学会の活動が社会的に評価されることの重要性及び財政上の税制優遇の必要性などを総合的に勘案して、公益社団法人への早期移行を目標とすることとし、冒頭に記したように以下のとおり理事会で決定しています。
新たな公益法人制度において、土木学会は、その活動目的を継続的かつ一層効果的に達成していくため、平成21年度を目途に、公益社団法人への移行を図る。
公益法人は、行政庁の厳正な審査により公益性を認定されることから高い社会的信用と評価が得られると考えられます。
会員各位にとっては、社会的信用度の高い学会の目的に賛同して会員となり、国が公益性を認定した活動に参画していることとなることから、社会的評価が向上すると考えられます。
また、公益法人は、寄附への税制優遇を受けられる特定公益増進法人(特増法人)に該当することとなり、これを活用して学会活動への支援を得ることは、活動の安定的継続に貢献すると考えています。
さて、公益認定を受けるためには、(1)法人法で求められている内部統治の一層の明確化、(2)公益目的事業比率の確認のための事業体系の調整と会計システムの整理の2点が特に重要です。
まず、内部統治の明確化は新制度のポイントであり、公益法人であるか一般法人であるかにかかわらず求められる重要な要件です。内部統治に関しては、従来の定款、細則類を法人法の要請に合致するように見直していますが、学会活動そのものはほぼ従来どおり継続しようとしています。これら定款や規程類の変更に関する基本方針に関しては、以下のとおり理事会で決定しています。
一方、公益性の確認のためには、定款に定める事業を一部組み替えるとともに、現在の会計体系を整理し、収支相償の確認を行いやすくすることとしました。会計手続きはすでに大半が電子化してあったため、この会計体系再編作業は比較的小規模な改変で終えられる見込みです。