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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2008年10月号モニター回答


■ 巻頭言 土木学会財政の健全化に向けて 大藪 勝美

巻頭言の文中にあるように,学会活動を衰退させないためには,若い会員の確保,若年退会者の抑制が必要だということは,納得できます。しかし,大学の学科名・専攻名から「土木」という名前がほとんど無くなった今日,若い会員,特に学生会員の確保は重要な問題だと思います。全国大会や支部の研究発表会で講演するためだけに入会する学生が少なくないのではないでしょうか。学会誌の中に学生向けの記事として,例えば,教材として使えるようなものや,学生からの質問コーナー(Q and A)などがあれば,学会を知る機会が増えてくるのではないかと思います。
(所属:九州大学 氏名:佐川康貴)

土木学会の正会員数が減少を続け、大学の土木工学という名称の減少に伴い、学生会員の募集もままならないと言う現状を耳にします。この記事にはまさにその”デフレスパイラル”に財政運営をいかに均衡を保つかという視点から意見を述べられている。私共のようなゼネコンに所属し、現場生活を長年過ごしてきた者の立場から功利的な見方をすれば、会員になった25年前から土木学会が自分に寄与してきたかを考えると土木学会誌の毎年数編の興味深い記事の購読、技術士の勉強を除いては費用対効果が低いと感じる。学会誌は25年前に比べると格段に進歩し、自己満足の記事がなくなり、ビジュアルで読みやすくはなり、学会としての細かい努力は感じるのだが・・・。一方、現実の社会に目を移せば、”はたして土木って今の日本に必要なの?”と考えさせられるような出来事(公共工事に関して採算無視の低価格入札、完成した大型土木構造物への批判等)がそこかしこに見受けられる。他方、資格制度を見ても、建築学科→建築士、土木学科→測量士、技術士という流れがあるものの、技術士は試験の難易度に比べて、排他的な資格ではないために、例えば土木系構造物である鉄塔の工作物確認申請にも建築士の認証が必要で、設計力のある技術士でも自分で設計したものを再度、建築士に申請を頼むのが慣例となっている。
(所属:熊谷組  氏名:後藤徳善)

■ PHOTO REPORT (2)東京湾口航路整備事業が完了―安全・安心な東京湾を目指して― 板倉 新

この記事を読んで、東京湾口航路の整備事業が完了したことを知りましたが、撤去された第三海堡の写真をみて、そこにあった構造物が現在どのようになっているかに興味を持ち、東京湾口航路事務所のホームページを拝見させていただきました。 すでに2001年5月の学会誌で同整備事業と第三海堡が紹介されており、今回は誌面に限りがあったのかもしれませんが、航路整備という土木事業とともに、海堡という歴史的土木構造物がどのようなもので、引き揚げられた構造物がどのように保存されているかなど、広がりのある話題だったので、PHOTO REPORTだけで終わらせてしまうのは勿体ないと思いました。
(所属:大林組 氏名:佐々木一成)

■ PHOTO REPORT (3)「ちきゅう」による科学掘削の開始―南海トラフ地震発生帯掘削計画― 倉本 真一

記事を読んで吃驚しました。『「ちきゅう」は・・・(中略)・・・将来は4000mの水深から7000mまで掘削して人類未到のマントルに到達するという壮大な目標をもっている。』 ・・・本当?!マントルに到達しようということが技術的な目標となり得るまでに科学は進展したのかということに、衝撃を覚えます。インフラストラクチャーの建設という分野では、あまり華々しくない下水処理・廃水処理を職業とする者として、反応タンクに空気を吹き込み、すでに汚水のなかに存在している微生物の働きにより水を浄化するという100年前から綿々と続けられてきた手法を日々繰り返すうちに、世の中はいったいどこまで行ってしまったのでしょうか。まるで浦島太郎の気分です。よもやこの先、科学の発達により人類がうんこを(失礼)しなくなる日も来るのだろうか?とまで考えましたが、直感的にそれはなさそうです。科学の進展に、人間の肉体がどこまで追従して行けるのか、そんなことを思った一瞬でした。
(所属: 共和化工株式会社  氏名: 岡田阿礼)

最近テレビで地震速報を頻繁に見るようになってから、次は自分たちの地域に来るのではないだろうかと、日々緊張しながら生活しています。しかし、「ちきゅう」によって、地震の発生メカニズムが解明されれば、地震発生の予測なども可能になり、被害を最小限に抑えることができるのではないかと考えています。このような大規模な研究が無事に成功することを切に願っています。また個人的には、「ちきゅう」のヘリデッキでランニングがしてみたいと思いました。
(所属:東京大学大学院 氏名:真田 圭太郎)

全長210mの船体を用いて最大1万mの深さまで掘削ができるという技術.目で確認できない海底,地中奥深くから試料を採取し,計測機器を設置.さらにそれら試料を即時に分析できる研究室を備えた素晴らしい船.少し前の時代では夢のようであった技術が現実となる科学技術の進歩に改めて驚きと感心を憶えた.ちきゅうによって地震発生のメカニズムから地球の誕生まであらゆる謎が解明し,それが地震の予知や土木界の発展,また,地球を見つめ直すことによる環境保護など,様々な面で有効に働くことを期待している.
(所属:株式会社豊和開発 氏名:冨田直人)

■ この人に聞く (株)海洋堂 代表取締役社長 宮脇 修一さんに伺いました(前編) [聞き手]溝渕 利明

海洋堂といえば、フィギュアというより、食玩・ガレージキットメーカーの中では、一番の完成度の高さを誇るといっても過言ではないと思う。チョコエッグでの成功は、宮脇氏にとって、今までの食玩が「子供のおもちゃ」だったり「大量生産=できの悪さ」といった関心の低い大人に対しての挑戦状だったように思える。プラモデル=だれがつくっても一緒、今の社会のものづくりへの考えと似ている。「だれが作っても一緒」というのは個性が無く、ただそのまま“やる”(売る)というのは、いつまでたっても成長しないと思うからだ。宮脇氏のプラモデルに対する思いは、ものづくりに対する数々の失敗を経て、今の海洋堂があるのだと思う。海洋堂のフィギュアは、どれひとつとっても、妥協を許さない完成度の高さを売りにしている。宮脇氏の言う、「ちゃんとしたものをつくりたい」と言うのは、あたりまえのことであるのに対し、わたしたちは「あたりまえのこと」が頭では理解していてもできないことが多すぎると思う。後編が楽しみである。
(所属:日本シビックコンサルタント株式会社 氏名:田島久美)

■ 特 集 海底を知る 企画趣旨 加藤 絵万

私が見た一番深い工事現場の記憶は、白鳥(はくちょう)大橋の主塔基礎であろうか?80mを越える深さの基礎底部から見上げた坑口が、尻すぼみに小さく見えたことが今も目に焼き付いている。こんな深いところに基礎を構築していくんだと感慨深いものがあったが、今回の特集で垣間見た世界は文字通り単位の違う超深度の話で、大変興味深かった。いずれこんな領域にも土木屋の出番は回ってくるのだろうが、さすがに見上げるわけにはいかなそうだが、海の底に土木の未来が眠っているのかもしれない。
(所属:北海道開発局網走開発建設部 氏名:泉澤 大樹)

■ 1.海底の地形 久保 雄介、平 朝彦

今回の特集「海底」について、この記事を読んで初めて知ったことが多く、興味をそそられた。実際、地下とか月、そういったものは、すでに人が立ち入っているからだ。私たちにとって、もっとも身近な「海」でありながら、その海底に関する情報はほとんどなく謎だらけであり、人々が容易に立ちいれられない場所と思っていた。最近の日本各地に発生する地震は海底が深く関与しており、今後の海底を知る上でとても判りやすく書かれており、海底に興味を抱く契機となった。
(所属:日本シビックコンサルタント株式会社 氏名:田島久美)

海底火山,海嶺や海溝など,プレートテクトニクスの事,日本の地震対策(研究プロジェクト)に関してあらためて興味深く読んだ。本号の扉図や14ページの図1(プレート分布図と移動方向)をみると,プレート境界付近にある国は日本だけではない反面,日本は3枚のプレート境界にあり,かつその影響が国土全体にわたるような先進国(おごった言い方かもしれません)は,どうも日本以外に無いようにも思えます。日本以外で地震が多い国では,どのような対策や研究が行われているのかと,疑問が湧きました。
(所属:東京大学 氏名:尾崎宏和)

■ 3.わが国における海底の資源開発技術 佐伯 龍男

タイトルを見てまず最初に読みたいと思った。何故なら昨今の原油高が現在最も注目を集める話題であるから、という理由に加え一児の母となり何よりも我が子の将来を心配するようになったからだ。一国の産業を支えるのはまずエネルギーである。原油埋蔵量の底が見えつつある今、エネルギー開発は急務であろう。この記事にあるようにメタンハイドレートを現実的に活用できるようになれば私同様の両親達の心配も拭われるのではないだろうか。
(所属: 氏名: 天王 嘉乃 )

■ はたらくどぼくきかい 第3回 スーパービートル 近藤 由美、関根 正之、香月 亜記範

専門外の私から見れば、このスーパービートルのような大規模な機械を作る方々が天才のように思えます。また、終電から始発までの約4時間という短い時間の中で、予定したすべての作業を終わらせている現場の方々や機械は、尊敬に値すると思います。人間と機械が協力すると非常に大きな相乗効果を生むのだなと、この記事を読んで感じました。
(所属:東京大学大学院 氏名:真田 圭太郎)

こんな専用機械があるんだな、と、感心した。企画から掲載までのどこまでを学生編集員が行っているのかわからないが、せっかくのこんな面白い題材を生かし切れていない感じがした。構図の工夫でもっと字数を増やせるはずなので、次回は臨場感や緊迫感を大いにふくらませて欲しい。肝心の写真もピンぼけはいただけない。こんなことにならないように、現地確認と同じ構図で複数枚撮影しておくことを勧めます。
(所属:北海道開発局網走開発建設部 氏名:泉澤 大樹)

■ CE リポート 話題 新潟県での震災廃棄物処理の現状と課題 ―地震後の環境対策を考える― 福田 誠、木村 智博、岡田 勝也、田口 洋治

震災廃棄物を迅速かつ安全に処理し,地域の復興や住民の健康を確保するという課題に関して,処理場そのものまでが被害にあって処理作業ができなくなるという点が,痛々しく思えた。それでも,廃棄物の発生やその処理が追いつかないがゆえに生じる環境汚染に対して,住民が関心をもっていることには,時代の進展が感じられました。
(所属:東京大学  氏名:尾崎宏和)

昨年8月、私は、新潟県中越沖地震の災害復興ボランティアに参加した。そこで、多くの倒壊した建物や陥没した道路を間の当たりにしたことが記憶に新しい。震災から1年が経過したものの、未だに倒壊した建物の修繕作業や廃棄物の処理が課題になっていることがわかった。また、全半壊した家屋の費用を全て自治体や個人が負担しなければならないといった厳しい現実も残されていた。本稿を読み、震災後の課題の多さや大変さを再確認した。
(所属:金沢工業大学 氏名:高柳 大輔)

法的規制が厳しくなっている現状の中で、災害に伴い発生した廃棄物の処理をどのように実施しているのか、非常に興味を持っていたところである。
本報告は、現地調査や住民へのアンケートを実施して調査していることから、現地の様子が非常に分かりやすく大変参考になった。廃棄物処理の問題だけではなく、廃棄物による土壌・水質・大気汚染の問題も派生することに驚いた。
災害発生後の現地の状況として、ニュース等により水道や道路等のインフラの復興は大きく取り上げられる。これは土木という観点からとても好ましいことだが、あまりニュースにならない廃棄物の問題も、現地では切実になることを知っておく必要がある。
災害はいつ起こるか分からない。事前からの準備、対策をしっかりしておくとともに、再生利用の更なる技術開発を進めていくことが重要であると考えさせられた。
(所属:中日本高速道路 氏名:舩橋修)

■ CE リポート 技術 地下の「天気図」 工藤 健、河村 将

地下の天気図とは一体何か、興味を引くタイトルだった。読んでみてまた驚かされた。地震予測のことを天気図と表現し、更に地震を引き起こすファクターを“雲”と位置づけていたからだ。一般人にもとっつき易く、とても興味深い捉え方だと思う。このような観測が予測につながり、活用されるようになる日を待ち望んでいます。
(所属:   氏名: 天王 嘉乃 )

最近日本で地震が頻繁に発生し、甚大な被害をもたらしていることを考えますと、この記事で書かれているような、地震の予知というものを積極的に研究していかなければならないと考えています。予測には多数の変数が関係するため、それらの変数を収集・計算・予測することに時間がかかるかと思います。ですが、将来世代が安心して生活できるように是非とも頑張っていただきたいと思います。そして将来、天気予報とともに地震予報が流れることを期待しています。
(所属:東京大学大学院 氏名:真田 圭太郎)

地下の天気図の発想大変面白く読ませてもらいました。天気予想のように地震の予知が出来たらどんなに良いでしょうか。「地下構造写真」、「地殻強度分布」、「地殻応力・歪み分布」、「地震活動のイメージング」を繋げることで地下の天気図が見えてくるような気がします。今後の研究に大いに期待しています。
(所属:前田建設 氏名:林 克彦)

■ 制度が変わる、土木が変わる 第17回 海洋基本法 松良 精三

新聞等で名称は聞いたことはあったものの、どのような法律か具体的に知らなかった海洋基本法の概要を知ることができました。「特集 海底を知る」で、海洋基本法に関係した取り組み例が取り上げられており、土木工学との具体的関連をイメージできました。紙面の都合や、「特集 海底を知る」の関連記事という都合から難しいかもしれませんが、海洋基本法に関係する土木分野のその他の代表的な取り組み例を、写真や図などで挙げていただけると、理解がより深まったように思います。例えば、「食の安全」が話題となっている昨今、水産資源に対する土木面からの取り組みなども、より重要性が高まってきているように個人的には感じております。
(所属:不掲載希望   氏名:笠原 宏紹 )

■ 見どころ土木遺産 土釜橋 ―山村の発展を支えた橋― 真田 純子

土木遺産は地味で、わざわざそれを見に行こうとは思わなかった。しかし今回の土釜橋はまず、写真に惹かれた。このような美しい橋が存在するなんて、土木遺産と呼ばれている構造物にもまだまだ華やかさが残されており、すてたものではないと感じた。この土釜橋にはさまざまな歴史があり、その役割を果たし、今では人びとが生活する上で、なくてはならない橋となっている。この美しい土木構造物を、いつまでも私たちは遺産として残していけたらよいと思う。そしてただ土木遺産にするのではなく、それを見に行こうという気持ちにさせられる環境を整備できれば、今後、人々がもつ土木に対するイメージを変えられるのではないか。
(所属:日本シビックコンサルタント株式会社 氏名:田島久美)

本記事を読んであらためて感じたことは、橋梁には個々の建設された背景、役割、そして利用者の想いがあるということである。日頃、1000を超える橋梁の維持管理計画に従事しており、橋梁の状況を客観的に分析し、合理性・効率性を追い求めているが、今一度、橋梁がもつ歴史・役割・利用形態に目をむけることで、有機的で充実した橋梁の維持管理ができるのではないかと感じた。本記事の土釜橋は、当初の輸送路・観光路としての役割を終え、現在は人々の生活の道となっている。老朽化が進行し、その機能の陳腐化した橋梁の多くは、架替えという選択を余儀なくされる中で、土釜橋は地域に愛されていたことをうかがうことができる。学会誌には、土釜橋と同様、各地域で愛されている橋をその背景も含め、より多く紹介して欲しい。
(所属:札幌市 氏名:須志田 健)

■ 論説委員会の頁 第15回論説(2008年8月版) 土木工学に生態学の知見を 近藤 徹

確かに土木工学では、力学系の知見を経験則で補強して体系化してきたと思います。私も環境関連の業務を10年以上行ってきて筆生物系の知見を導入して新たな土木工学を構築する時期に来ている様に感じています。言い換えれば、今の土木工学は限界に来ており、生物学という新たな力を得ることで飛躍できるのではないかと思います。
(所属:前田建設 氏名:林 克彦)

■ 土木に見る数字  第3回 62、1067、1372、1435 下大薗浩

数字の見当は全く付かなかった。この数字、鉄道軌道の間隔「軌間」というのが答えであったが、以前より駅で電車待ちをしている間「このレールは北海道まで続いているのだろうか?」などと低レベルな空想をしていた私にも非常に面白い記事であった。我々の業種は全ての形に理由があり、「何となく」が許されない。そのことからフランジの役割も脱線防止のためのものという事は理解していたが、車輪の内側直径が狭くなっている理由については「なるほど!」と、目から鱗の解説であった。しかし、疑問はまだ残っている。フランジは何故内側でなくてはならないのか?多分これにも理由があるのであろうが、この疑問は次回の楽しみに取っておこう。
(所属:(株)栄設計 氏名:木村了)

■ どぼく自由自題 第5回 小声で一言〜その2技術基準の落とし穴 斉藤 親

そもそも土木構造物とは「人が安全に快適に暮らす」ためのものである。特に近年は地震や様々な問題が起きる度に基準が見直され、技術者も付いていくのが大変である。勿論この基準見直しは安全のためには欠くべからざる作業であり、そのための勉強は我々技術者の使命でもある。ただしあまりに基準に縛られすぎてしまい、周囲との調和、美的感覚に乏しい構造物になってしまっている例も多い。文中にある宇治川橋の歴史的風土への配慮には担当者の情熱で許可が下りたようであるが、基準とのせめぎ合いで膨大なネルギーを要した事は想像に難くない。「人が安全に快適に暮らす」と言う目的の「安全」の部分は前述のように確実に進歩している。もう一つの「快適」に関しては残念ながらまだまだ遠い状態のように思われる。利用する人々は日常的に、いや数百年に渡りその構造物を見ていかなくてはならない。筆者の言う通り、基準を上手く利用しつつ人々の快適な生活を提供するのが我々のこれからの課題であると考える。
(所属:(株)栄設計 氏名:木村了)

怖い。何とも怖い記事です。もし、自分が6億円を要求される企業の技術者であったら?勿論、ここでの博士と同じ発言をするでしょう。自分の知り得た知識の中で、確信を持って論理的に行動しても、未知の事象が起こればすべてがひっくり返ってしまうという怖さ。明日は我が身と思わずにはいられません。 技術を一定の水準で現実の対象物に反映させるための技術基準ですが、現実が基準に従って動いている訳ではなく、つねに目の前にある事象を固定観念のない目で見なければならないのでしょう。それは、工学というよりむしろ科学(science)の視点なのかもしれません。
(所属:共和化工株式会社 氏名: 岡田阿礼)

記事を読み非常に啓発された。自分が携わっている仕事を振り返ると、例えば、技術基準における耐震設計の規定は、兵庫県南部地震前後で大きく変わり、また、港湾施設は、H19年度の技術基準改訂で、サイトスペシフィックな地震動を用いて設計するように変わっており、大地震を通して自然から学んだ、その時代の先端的な知見が技術基準に盛り込まれ設計実務にフィードバックされている。設計実務者にとっては、技術基準に従うことで、専門的な知見を反映した設計を行えるという利点がある。しかし一方で、技術基準は、改訂された時点で固定化され、その後に得られた知見や研究成果の反映は、次の技術基準改訂まで待たざるを得ない。20年以上まえ土木技術者になろうと思った頃の初心を思い出しつつ、「設計根拠や設計結果の説明が楽だから」といった安易な理由だけから技術基準を振りかざすことを慎み、技術基準を単純に適用するだけではうまくいかないような課題にプロフェッショナルとして対処できるよう、継続的に技術動向や知見を獲得し、土木技術者としての専門能力を維持・向上させなけらばならないと、改めて感じた。
(所属: 氏名:笠原 宏紹 )

今回はこれが一番の記事でした。土木現場の世界では、相変わらず「図面至高主義」とでも言わんばかりの「図面通りに施工した」がまかり通っている。その前段として、「基準に沿って設計しました」も我が物顔で横行している。確かに基準は大切だし、何かあったときには基準に逆らわないことが何よりの安全策かもしれない。しかし、まるで出来の悪いパズルでも作っているかのような(しかも机上で)設計と現場は、時に何か悪い夢を見ているのではないかというくらい「歪(いびつ)な構造物」を生み出す。技術屋たる土木屋の技術力低下に歯止めが効かなくなった昨今(私も含めて)、それ以前にセンスが無くなってきたな、と感じるようになった。「機能美」という言葉があるが、それはなにも橋やビルなどのランドマーク的な構造物のみに当てはまるわけではない。時として、何の変哲もないガードケーブルの生み出す流れるような曲線や整然とした直線にだって、人は目を奪われることがある。それは、道路や土工全てが整然と調和しているからこそ得られるものであり、漫然と個別に作業していては得られないものではなかろうか?俗に言う「通りがよい」状態がまさにそれなのだ。若い技術屋さんはもう少し現場を眺め、ほんの少しだけセンスを磨いてみましょう!優れた道路は、美しさだけでなく、土木屋が忘れかけている達成感も満たしてくれるはずです。
(所属:北海道開発局網走開発建設部 氏名:泉澤 大樹)

現在、さまざまな場面で技術基準が活用されておりますが、実際のところ、全てが基準に合致するわけではない中で、私たち土木技術者が取るべき姿勢を的確に捉えているとても良い記事だと感じました。この記事には直接関係ないのかもしれませんが、どの組織でも課題となっている土木技術の伝承は、基準が整備されているがゆえに発生する「基準通りだから問題ない」という意識により妨げられているように感じるときがあります(基準類の存在を否定するものではありません)。過去、大先輩たちは、明確な基準がない中でも、自分なりに考え、その時々で最善の策を見出し多くの土木構造物を作り上げてきました。そんな取り組みの中でこそ、技術力が養われ、本当の意味での基準理解へつながっていくのではないかと思います。
(所属:東京急行電鉄株式会社 氏名:小里 好臣 )

■ [学会誌全般・編集委員会へのご意見・要望・その他自由記載]

久しぶりに読ませていただきました。前回より情報欄(学会誌の後半部分)が多いような気がいたしました。もう少し記事が掲載されていても良いのではないかと思いました。
(所属:東京大学大学院 氏名:真田 圭太郎)

© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会