論説一覧 (2007年6月版〜2008年5月版)
第12回論説(2) 公共事業への無理解とその反論 (栢原英郎/論説委員)
公共事業、土木事業への批判が引き続いている。これに対して我々は、国民の理解を得るために繰り返し説明し、反論を続けている。しかし、効果がないのはなぜなのか。
我々の反論は、我々の立場から一方的になされていないか。聞き手側に立って内容を吟味すべきではないか。また、国民が求めていることを実施することが正しい社会資本整備の姿勢だろうか。我々がなすべきは、国土にとって必要な社会資本を整備することではないのか。
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第12回論説(1) 建設業の魅力回復を (山本卓朗/論説委員)
国民の社会資本整備、公共事業、建設業に対する根強い不信感を払拭するためには、官学民を問わず関係者の粘り強い本質的な議論をもとに、広く理解を求める努力が必要である。特に真に意義のある社会資本プロジェクトの追求、建設ものづくり離れを防ぐ現場環境の向上策が必要である。
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第11回論説(2) 「国土学」と「比較学」のすすめ (大石久和/論説委員)
土木工学の実現過程は、圧倒的に公共事業であるが、この言葉には、フローの意味しかない。土木の効用はストックとして発揮できるものなのに、その言葉を持たない。国土への働きかけは、「国土学」ととらえた歴史的および国際的な比較のなかでしか評価できないことを論ず。
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第11回論説(1) 教養と専門(学部と修士) (丹保憲仁/論説委員長)
高等教育に学ぶ人が18歳年代の50%にもなり、大学院の進学率が理系では50%にもなろうとしている今日、学部教育と大学院教育(特に修士課程)の明確な特徴づけが、21世紀の高レベル知的社会形成のための高等教育の設計に緊要である。学部課程の教養教育・導入的基礎教育の徹底と大学院での多様なプログラム型専門教育の相互連携展開が次の時代に世界に活躍する日本人を作る。
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第10回論説(2) 最前線の技術者達が学術的活動を実施して行ける環境整備を (草柳俊二/論説委員)
日本の技術者の履歴書には学術的な業績がほとんどない。議論に勝てないのは語学力の低さではない、論理的に話しを組み立てる能力が不足しているからなのである。この能力を養うために、生産活動の最前線の技術者達が学術的活動を積極的に行ってゆく環境を作って行くことが求められている。
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第10回論説(1) 魅力ある職業資格への議論を (日下部治/論説委員)
職業資格の社会的効用を確認しグローバル化時代の視点を持ちつつ魅力ある職業資格の育成を軸にした議論を深める必要がある。職業資格の育成は人材育成と連動しており、産官の教育参画が必須であり、建設分野の資格を魅力的な職業資格に育成し、建設分野が総力を挙げて有為な次世代人材を集める議論を早期に開始すべきである。
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第9回論説(2) 景観という戦略 (内藤廣/論説委員)
グッドデザイン賞は家電、自動車、建築、都市、先端分野、あらゆるテリトリーから数千点の応募がある。ここ数年、国策の柱として取り組んでいる韓国デザインの躍進が目立つ。諸外国の事例を見ながら、わが国のデザインの戦略性の無さを論じたい。
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第9回論説(1) 土木構造物の「トレーサビリティ」 (魚本健人/論説委員)
食品などは「食の安全性」をアピールするためにいつ、どこで、どのようにして生産・製造されたものかなどの「トレーサビリティ」が重要視されており、これを逆手にとった不正などが問題となった。しかし、より長い期間使用される土木構造物では、「トレーサビリティ」そのものの重要性が意識されていず、容易にはわからないことが多い。これからの少子高齢化を考えると、設計図書、施工図書、維持管理図書などの詳細な情報をきちんと後世のために残すことが土木技術者にとって最も重要であると考える。
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第8回論説 技術者が安全・安心の真の担い手 (堀正幸/論説委員)
地震や洪水等の自然災害や建設現場等での緊急事態における技術者の冷静な判断と行動が、事態を平穏に治める。多重の安全装置を具備した洗練された重要設備といえども、その操作と緊急の対応はそこにいる技術者の手に委ねられている。このような技術者の実態が世に発信され、評価されることは少ないが、技術者の一般市民からの「信頼」を得て初めて、真の「安心」を伴う技術先進国となりうる。
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第7回論説(2) 社会基盤の再定義 (土岐憲三/論説委員)
社会資本とは、国や地方公共団体によって供給される社会的共有財産であり、現代人の物質的活動に必要であると同時に、その結果として生み出されたものの総称である。一方、文化遺産は先人の精神活動の結果生み出されたものであり、また現代社会の重要な構成要素でもある。この両者を合わせたもので「社会基盤」として再定義してはどうか。
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第7回論説(1) 総合的な土木工学による治水対策 (近藤徹/論説委員)
近年自然の災害エネルギーが一層凶暴化している。一方で治水施設整備は、国際的にも極めて低い水準にある。少子高齢化社会を迎えて、なお経済活力を維持するには、壊滅的被害を如何に回避し、氾濫しても被害を極小化するため、治水施設整備のみならず、都市計画、道路、土地利用等の総合的な土木工学が必要である。
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第6回論説(2) 「国土の均衡ある発展」と建設産業 (米田雅子/論説委員)
地方公共投資による「国土の均衡ある発展」政策が転換期を迎えている。現在、社会基盤は成熟しつつあり、公共事業だけに頼らない地方の雇用創出策が求められている。経済対策に翻弄されなくなることは、頑張る技術者が報われる明るい世界が近いことを意味している。必要な社会基盤を、長期に使用できる良質なストックとしてつくる建設産業こそ求められている。
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第6回論説(1) 道路公団民営化がもたらしたもの (井上啓一/論説委員)
近年土木の分野でも不祥事が度々発生し、信用回復のための取組みが大きな課題である。東日本高速道路(株)に対しても、経営安定のための効率化追求等により、サービスレベルの低下を懸念する声がある。しかし、現在では「お客様第一」、「公正・公平な企業運営」、「効率化の追求」の経営ビジョンのもと、予算主義から脱却し、経営環境を勘案しつつ最善の選択を行い、更にPDCAサイクルを廻しながら最適の選択にむけて向上を目指す会社へと変革しつつある。これにより、サービスレベルを高く保ち、お客様の期待を裏切らないよう取り組んでいる。
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第5回論説 地域格差と社会資本 (森地茂/論説委員)
世界の奇跡と言われた戦後の高度経済成長をもたらしたのは、社会資本整備を核とする日本型地域発展モデルあった。プラザ合意後の生産施設の海外流出はこのモデルを崩壊させ、公共投資批判が高まった。一方で、地域格差が政治課題となっている。国土形成計画の広域地方計画と社会資本整備に際し、新たな地域発展モデルの創出を目指すべきである。
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第4回論説(2) 「武士道」に学ぶ技術者の倫理規範 (清野茂次/論説委員)
新渡戸稲造が解く「武士道」は、日本人特有の高貴な精神文化であり、世界的にも有名である。しかし、戦後の日本人は人間としての規範が薄れてきた。特に、土木技術者は、インフラの整備と公共の安全・福祉に強く関わっている。そのためにも武士道に学び、一段と厳しい倫理規範をもって対応し、一人ひとりの矜持を高め、社会に貢献しよう。
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第4回論説(1) 地球温暖化と日本の課題 (青山俊樹/論説委員)
地球が温暖化すると、日本付近では、強い台風が増え、降水量及び強雨の発生頻度は増えるが、雪は減り、無降水日数が増える。この気候変動は、我々の生活の安全を大いに脅かすことになるが、それに関連して高潮対策、洪水、渇水対策の必要性を述べた。
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第3回論説(臨時) 原子力発電への信頼回復に向けて (濱田政則/論説委員)
新潟県中越沖地震による原子力発電所の被災は、大量の放射能漏れなど重大事故に至らなかったものの、地震後の事業者の不適切な対応や一部マスコミの不十分な報道もあって、原発に対する国民の不安感を助長させた。本文では今回の原発の被害が提起した耐震設計上の課題を論ずるとともに、今後原発建設に対する国民からの信頼回復に向けて土木学会など学協会が果たすべき役割について言及する。
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第3回論説 誇りを持って建設業を語る (山本卓朗/論説委員)
建設業は国民生活と安全を守る社会資本整備を担う産業であり、それに従事する技術者は誇りを持って困難に立ち向かってきた。しかし今日、談合問題などにより社会から大きな不信感を持たれている。建設業を魅力ある産業に再生する課題ついて論ずる。
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第2回論説(2) 生態学と経済学 (塩谷喜雄/論説委員)
今、欧州は政治も経済も「環境」を軸に展開している。何でも「エコ」の環境原理主義にはいささか抵抗のある人々も、文明の持続可能性=サステイナビリティへの理解度は高い。エコロジー(生態学)とエコノミー(経済学)が敵対せずに、共存へと向かっている。
物理学者であるドイツのメルケル首相が議長を務め、この6 月にバルト海に臨む保養地ハイリゲンダムで開いたG8 サミットを取材に、久しぶりにドイツを訪れた。サミットは欧州が想定内、折込済みの妥協をして、これまで温暖化防止に背を向けてきた2 大排出国、米中をポスト京都議定書の新しい枠組みづくりに引き込んだ。
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第2回論説(1) 「私」を考えて「公」を主張すべきは誰なのか (大石久和/論説委員)
土木の研究成果は、その圧倒的部分が公共事業によって活かされることになる。土木の実現過程は公共事業である。整備費や管理費にあてる予算は、この15 年ほどで国費で半減、地方費ではそれ以上に削減されたから、土木の研究成果の国民への反映も半減以上の削減にあったといっていい。
一人一人がそれぞれにやったのでは実現できないか、あるいはサービスが一部にしか提供されないものについては、みんなが少しずつ負担した費用で、みんなのためになることをやる。これが公共というもので、近代社会になればなるほど、私人としての努力の外に公共としての努力を加える必要が出てくる。
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第1回論説(2) 安全・安心な社会の構築へのパラダイム転換 (濱田政則/論説委員)
地震・津波災害、風水害などの自然災害が世界的に増大している。地球の温暖化と海面上昇、都市域のヒートアイランド現象、森林と耕地の喪失、砂漠化の進行および河川・海岸の浸食などの都市と地方を取り巻く環境の変化が集中豪雨・豪雪、巨大台風・ハリケーンなどの発生、異常少雨と異常高温および高波・高潮の災害の危険性を増大させている。また我が国では、少子・高齢化、核家族化、都市圏の過密化と地方の過疎化などの社会構造の変化が災害に対する脆弱性を増大させている。共助意識の減退、災害経験伝承の減少および電子機器への過度の依存などライフスタイルの変化も災害に対する危険要因となっている。
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第1回論説(1) 目ははるか地平を、足はしっかりと大地を (丹保憲仁/論説委員長)
1972 年の国連のストックホルム人間環境会議以来、地球が閉じた系であり、果てしない人類の成長(増殖)は無い事を人びとは広く公に知り始めた。18 世紀始めから21世紀末にかけて人類は史上最大の、おそらくは人類史上ただ一度の、大増殖を近代文明上で描いている。様々な推計法によっても、閉じた系の人口変化を大略記述するロジステック曲線等で概括的に予想しても、地球の飽和人口は、100 億人前後と想定される。
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「土木技術者として国土全体を考え、我が国土にとって必要なのだという説明に力点を置いてはどうか。」というくだりがありました.この点は大変,重要なことですが,「わが国土」というと少しスケールが大きくて,理解をしてくれない方も出てくると思います.
この際,国土というよりは,「あなたの今の生活のこの部分を改善するのに必要」という説明にし,主に人口の多い三大都市圏の生活を成り立たせるための意見を中心に述べた方が分かりやすくてよいかと思います.
三大都市圏を中心とするのは,いわゆる「地方切捨て」ではありません.都市圏の生活が成り立っているのは地方からの食糧等の供給があるからですので,都市を成立させようとすれば,おのずから地方の役割がきちんと出てくるわけです.
そんなところをデータ等で示し,理性的に説明することが重要ではないかと思います.
(正会員 2008.6.25)